タモパパ（タモリ）が人を愛せない・息子草なぎ剛を励ました３０分間の訳

2015/05/11 2015/09/15

２０１５年、➡「笑っていいとも」の放映終了後の紅白歌合戦で、草なぎ剛がタモリさんの前でひざまずいて「世界に一つだけの花」を熱唱。タモリさんこれまでありがとうの意味が込められているのは誰の目にも明らかで感動を呼びました。

タモパパ（タモリ）が人を愛せない・息子草なぎ剛を励ました３０分間の訳

おじさんと半同棲など意外な告白が続くＳＭＡＰ

２０１５年に入ってＳＭＡＰは不可解な動きを見せます。稲垣吾郎が再三にわたり「家に頻繁に泊まりに来るおじさんがいる」と謎の半同棲を告白。「自分の性別がわからなくなってきた」という発言もありファンの間で波紋が広がります。その波紋が冷めやらぬなか、フジテレビ系のスペシャル番組「中居正広のISORO（イソーロー）」におじさん本人が登場。一緒にお風呂に入るなどきわどい告白もありましたが、おじさんの夫人（元宝塚女優）も登場し、全体としては奇異なほど仲がよいと冗談めかしてまとめられました（雑誌に写真を撮られスクープされる前に暴露してしまう高等戦術の可能性も）。

➡稲垣吾郎の同居人ヒロ君顔公表　ジャニーズ事務所が公認した５つの理由（外部サイト）

草なぎ剛が「結婚を考えた人がいる」と発言

その波紋も冷めやらぬなか今度は草なぎ剛が５月１１日の「ビストロSMAP」で「自分にも泊まりに来るおじさんがいる。しかも２人いる」と明かしました。この情報は４月末からリークされておりファンの間では話題になっていました。

しかしながら、国民的アイドルグループの２人が相次いで泊まりに来るおじさんがいると明かした割には、ネット上で話題が大爆発することはありませんでした。SMAPの人気低下はすでに指摘されていますし、ファンも年齢が高くなり清濁併せ呑む淑女になっています。「おじさんならおじさんでいいし、それでも応援は続ける」というスタンスなのかもしれません。嵐のメンバーが「家に頻繁に泊まりに来るおじさんがいる」「自分の性別がわからなくなってきた」と発言すればもう少しキャーキャーした騒ぎになったでしょう。

その後「ビストロSMAP」で草なぎ剛は「過去に結婚を考えた人がいる。しかしうまくいかなかった」という過去を初めて明かします。どちらかというとこちらが主眼であり、おじさん発言は話題作りと考えても良さそうです（それだけジャニーズ事務所側は人気低下に危機感を持っているのでしょう）。冷静に考えれば草なぎ剛の同世代はみなおじさんですし、自宅も広いでしょうから遊びがてら泊まりに来ても不思議はありません。また、大物芸能人には同性異性問わずパトロンがいるのが普通です。

渦中の草なぎ剛がヨルタモリに出演

出典：フジテレビ「ヨルタモリ」２０１５年５月１０日放映

最近の草なぎ剛は深い悩みをテレビなどで告白することが多くなりました。「人を愛せない」「結婚とかは今わからないし、なんか‥‥愛せない。好きな感じがよくわからない」などと発言しているのです。

２０１５年５月１０日に放映された「ヨルタモリ」では、草なぎ剛がゲストに招かれました。冒頭。従来なら番組の舞台であるバー・ホワイトレインボーのママ役の宮沢りえたちが、ゲストに近況を聞いていくはずの場面です。しかし、この日は異例の進行でした。草なぎ剛は新たに習得したギターを使い、番組のために曲を作ってきていたのです。

草なぎ剛がギターを始めたのは２０１３年の夏頃。２年近くたちそれなりに慣れてはきていると思います。しかし、忙しいスケジュールのなか「ホワイトレインボー」の歌を作曲し、テレビで披露できるレベルまで練習をするのは大きな負担であったと思います。しかし草なぎ剛は尊敬してやまないタモさんのためにやってのけました。

さらにタモリさんが登場すると、草なぎは「ヨルタモリ」の番組の内容のことばかり話します（タモリ扮する吉原さんがバーの代金をツケにしている件など）。恐らく普段から番組を見ているのだとは思いますが、大好きなタモさんのために予習をしてきたのでしょう。

気づかったママが「料理はするの？」と聞くと、その答えもそこそこにすぐにタモさんの料理の腕の話に。さらに➡ヨルタモリ第４回の話題（タモさんがパンにバターを塗る音が嫌いだというエピソード）に自ら言及します。妙に舞い上がり早口になったのは、タモさんの話が楽しくて仕方がないからだったのでしょうし、客観的には微妙なネタも、草なぎ本人のなかでは珠玉のネタだったのだと思います。

番組の冒頭を見るだけでこの人はどれだけタモさんが好きなんだろうと思いました。もちろんタモリさんも草なぎ剛をNHKの「ブラタモリ」のナレーターに招聘したように相思相愛です。

➡ヨルタモリ×草なぎ剛（愛、夢、友達は嘘、三崎口駅）／2015.5.10 No.25

「人を愛せない」と悩む草なぎ剛　そのときタモパパは？

「人を愛せない」。ブラタモリではそのような発言はありませんでしたが、それを知ってか知らずしてかタモパパは愛について持論を展開します。愛という言葉を軽はずみに使う人間は信用できないというのです。

特に若い人は恋を愛と勘違いしているといいます。世間の若い奥さん方は夫のここがいい、ここが悪いと盛んに言う。しかし、夫そのものに良い所悪い所があるわけでなく、恋していれば良くそうでなければ悪く見えるのだという訳です（事実があるわけでなく解釈がある。そして恋の賞味期限は意外に短い）。

「理由なく始まりは訪れ、終わりはいつだって理由をもつ」という浜崎あゆみの歌詞がすべてを言い当てているといいます。愛と呼ばれるもの大半は短期的な恋に過ぎず、仮に人を愛せないと感じても落胆することはないというのです（愛は別のところにありなかなか辿り着けないものだから）。ほっとしたのか草なぎは「今は結婚しない」とカメラに向かって宣言します。

これと前後して、タモパパは草なぎのことを「向上心がない」と断言します。しかしそれこそ「ジャズな生き方」だとタモリさんとしては最高級の賛辞を贈ります。ジャズは毎回コード進行が変わる即興芸術ですから、楽譜があるわけではありません。３０歳近くまで喫茶店のマスターをしており、誘いがあって芸能界に転がり込んだタモリさんらしい考え方です。毎日好きなことに真剣に打ち込んでその結果として何かが起こるというのです（倒錯のない自然な因果律。ビジネス書や進路の手引き書は未来が現在を規定するという奇妙な因果律を強調）。この流れで、「夢を持つこと」を強要する教育に批判的な意見を述べます。タモパパは、夢や目標がないと自己分析する草なぎ剛を、向上心は言いようによっては邪念だと援護します。

ビストロＳＭＡＰで草なぎ剛は、「向上心がない」とタモリに断言されたエピソードを中居正広に話します。草なぎは自分のことを分かっているタモパパに肯定的に指摘されたことが嬉しくて話したのですが、中居正広にはうまく伝わりません。自分の欠点を指摘されるのは嫌だよねで済まされてしまいます。

物心ついたころからタレント活動をし（下積み期間は長かったとはいえ）次々に仕事がブッキングされるＳＭＡＰに属していた草なぎ剛は夢を持つ暇がなかったはずです。そのようにして４０歳まで来てしまった草なぎ剛の不安を読み取ったタモパパは、ヨルタモリの場を借りて「大丈夫だ私は７０歳までそれでやってきた」と伝えたかったのでしょう。

タモパパは誰に話していたのか？

この話の間タモリさんが草なぎ剛にほとんど目を合わせることなく、カメラの先の視聴者に向かって語っていたことが、逆に草なぎ剛に語っていることを隠したがっているようにも見えました。タモリが「ジャズ喫茶のマスター吉原さん」など別の役を演じる設定。番組開始時には「東洋経済」に手厳しく批判されましたが、この設定もうまく使ったような気がします。

➡ヨルタモリ初回視聴率低迷？東洋経済誌からの批判へ反論する

吉原さんであるタモパパがカメラに向かって持論を語る傍らで、恋人のように深くうなずいていた草なぎ剛が印象的でした。（当初からこの設定が、タモリさんから意外な本音を引き出す道具になるだろうと指摘していた人がいましたが、慧眼でした）

「人を愛せない」「結婚とかは今わからないし、なんか‥‥愛せない。好きな感じがよくわからない」と何度か発言した草なぎ剛。また「向上心がない」とも断言されむしろほっとした草なぎ剛。この日のタモリさんは、悩める３０歳年下の青年に「安心しなさい。そのままで構わんのだよ」というためだけに番組を進めていました。（普通に見れば）いつもよりもメリハリがない進行になったのはそのせいです。

多くの後輩芸人の悩みや素質を見抜き救ってきたタモリさん。そのタモリさんを尊敬し強く慕う草なぎ剛。タモリさんは「吉原さん」という仮面をかぶり、ずっと視聴者に対して語り続けましたが、二人の間では同時に別の時間が流れていたような気がしてなりません。新成人から「理想の大人」に選ばれたこともあるタモリさんの人間性が、最も強く感じられた今回が「ヨルタモリ」の最高傑作であった気がします。