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ヨルタモリ 李澤教授の第3回百人一首講座を深掘り

      2015/02/08

ヨルタモリで人気コーナーとなりつつある「李澤教授の百人一首講座」を少し深堀りしてみました。

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ヨルタモリ 李澤教授の百人一首講座

この記事では2014年11月16日の百人一首講座#3(第3回)を深掘りしています。画像の出典はフジテレビ2014年11月16日。画像に関しては著作権法第32条第1項の適法な「引用」の範囲内で一部転載いたします。

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ヨルタモリ 李澤教授の百人一首講座#3 中納言家主とは?

キャプチャ

第3回百人一首講座

かさぶたの めくれる端に 置く干物 しらきりとうし 夜ふいに蹴る(中納言家主

[本歌]かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける(中納言家持

 

中納言って何?

第3回の和歌の作者は中納言家主(本歌では中納言家持=やかもち)。

中納言、大納言などと聞くといまでは「大納言小豆」という大きくて煮崩れしにくい小豆の品種として認識されています。もともとは日本の貴族や武士の官位を表す言葉で飛鳥時代以降明治初期まで使われ、現在でも褒章(ほうしょう)の体系の一部に名残がある不滅のシステムです。

江戸時代においては、城内で刀を抜いたら即切腹と定められていました。しかし、ナンバースリーの大納言以上は免責されたことから、煮込んでも「腹が切れない」小豆ということで大納言小豆とネーミングされたという説があります。その大納言より小粒である「中納言」「少納言」という品種も存在するようですが、やはり大は小を兼ねるようで現在は大納言小豆が主流になっています。

ただ、この大納言、中納言などの身分制度は江戸期よりも平安期のイメージが強いかもしれません。これらは、平安期においては貴族の官位となっていました。貴族というのは、「高貴な身分で和歌や管弦にうつつを抜かしている輩」のイメージかと思いますが、実は「国家公務員」のことを指します。平安時代に最盛期を迎えた貴族(国家公務員)の官位は時代によってかなり異なりますが最大公約数をとると次のようになっています。

一位 太政大臣
二位 左大臣(右大臣)
三位 大納言(中納言)
四位 参議(中将)
五位 蔵人

三位は「さんみ」、四位は競馬の騎手にいますが「しい」と読みます。現代の会社に当てはめると次のような位置づけになるかと思います。

天皇=社長

一位 太政大臣=副社長
二位 左大臣(右大臣)=本部長
三位 大納言(中納言)=部長
四位 参議(中将)=課長
五位 蔵人=係長

ちなみに第1回百人一首講座の「本歌」を詠んだ紫式部が書いた「源氏物語」に登場する超イケメン光源氏は、父が天皇という御曹司です。そのため若くして、いきなり中納言の一つ下の中将という課長級でデビューをします。どの会社でも、子会社で武者修行していた創業者の御曹司が、若いにもかかわらずかなり高い役職で本社に初登場してくるイメージです(誰も逆らえない)。

皇族筋の国家公務員・光源氏は、二十歳にも足らない年齢で課長級の権勢を得ることになります。そしてやはり課長級の「頭中将」という悪友ができ、彼に女遊びを吹き込まれます。現在でいうと、学習院を出た良家の坊ちゃんが青山学院(または慶応義塾)出身の悪友に「お前。女というのはだな……」などと仕込まれる感じでしょうか。

その後もともとイケメンの素質があった光源氏も才能を開花し、お互いにどちらがモテるかの競争を始めます。あるとき光源氏は京都に箱入りのお嬢様が「手つかず」のまま存在すると噂を聞きつけます。名家の末裔なのですが現在やや落ちぶれて古い屋敷にひっそりと暮らしているというのです。今でいうとだいぶ古くなった型落ちのそれでも立派なマンションに国宝級の令嬢が暮らしているというわけです。

光源氏はあるときそのお嬢様の屋敷を探りに行くと、琴の音が響いてきます。現代でいうと古いマンションのカーテンの向こうから、令嬢が弾いているだろうピアノの音が漏れ聞こえるという状況に近いです。そしてそのピアノは決して達者とは言えなかったのですが、すでに頭の中に「名家の末裔=恵まれない美人令嬢」のイメージが強固な光源氏は、決してよくあるうまい演奏ではないが素晴らしい音だと思い込むのです。これは現代の男性でも、好意を寄せた女性のことならすべてがよく見えてしまうのと全く同じです。

ほのかに掻き鳴らしたまふ、をかしう聞こゆ。何ばかり深き手ならねど、ものの音がらの筋ことなるものなれば、聞きにくくも思されず。

(口語訳)令嬢が楽器をやさしい音色で奏でるのはいい感じである。決して上手くはないが、さすがに良家だけあってずいぶん高級な楽器のようで、悪くはない。

その後紆余曲折あり、最終的には光源氏が課長級の権限を悪用します。令嬢の屋敷に出入りしているとある女性に手引きさせ、深夜屋敷に乗り込むのです。完全にライバルを出し抜いたわけですが、すべてが終わって朝、顔を見ると……。

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画像はイメージです。

という有名なお話があります。当時は女性は完全に許した相手にしか顔を見せませんでしたし、夜の邸宅は暗いのでこういったアクシデントが起きていたようです。

光源氏として一生の不覚ともいえるできごとだったのですが、光源氏のすごいところは一度関係を持ったからという温情でその後も着物を送ったり、いろいろと経済的援助をしていくところですこのマメさと誠意が光源氏が長くモテた理由のようです。(しかし光源氏も普通の男子的な部分はあり、事のあった翌日に送ることになっているレターをかなりめんどうがり遅配となります。この遅配は女性から見ると屈辱であったようです)。

光源氏はこのように若き課長級時代に悪友とさまざまないたずらをしながら過ごすのですが、ある時期に皇居内で敵対派閥の勢力が増すのです。そして部長級(正確には右大将)のころ自ら須磨(神戸あたり)へ退去します。

この退去というのは、完全に左遷される前に自ら異動を申請するということです。そのため源氏物語の解説書には「須磨へ退去した」とあるものが多く「須磨へ左遷された」とは書かれていませんでした。現実に左遷辞令が出てしまうとキャリアに傷がつき「公務員生命」を絶たれてしまうことになったようです。

現在でいえば、社内の派閥争いで分が悪くなり、人事異動の前に自ら京都本社を出て「須磨営業所」に異動願いを出すような状況です。いまは神戸と言えば都会ですが、当時は本当になにもなかったようです。なお当時の感覚として「須磨に異動」の場合は京都から地理的に遠くなく周囲に「復帰の道筋もなくはない」とアピールすることになったようで、大宰府あたりであれば完全に失脚ということだったようです。

さて、少し脱線しましたが「かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける」を詠んだ中納言家持は、最終的には部長級の役人に上り詰めたということになります。

 

70歳で部長級になれた公務員・中納言家持(=やかもち)

第3回百人一首

かさぶたの めくれる端に 置く干物 しらきりとうし 夜ふいに蹴る(中納言家主

本歌

かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける(中納言家持

本歌のほうの「中納言家持」は、若くして部長級の地位を得た光源氏とは違い、完全な叩き上げでした。

yakamochi

出典:ウィキペディア

光源氏同様イケメンとして知られていますが名家の出ではないため六位以下の官位からスタートし、7年後にようやく係長級(五位)に昇進。その後エリートでないため富山の担当官(守、現在の県知事)を務めるとその功績からようやく少納言に昇進します(まだ係長級です)。

当時は地方の担当官は家族を京都に残していくにしても連れて行くにしても、非常に遠く不便を強いることとなり、かなり厳しい職務だったようです。そのため地方を転々としている間に寿命が来てタイムオーバーとなる貴族が続出していました。現在でいうと、家柄が悪いので、妙に長く主任を務め、ようやく念願の係長となるも全国の支店を転々とし、定年を迎えてしまうようなものでしょう。

しかし、万年係長が得てして釣りやカラオケでは右に出るものがいないなど特技を身につけているように、中納言家持(やかもち)も和歌が得意でした。そのため万葉集を編纂したということで後世に名を残すことができています。芸は身を助けるということですが、平安期の感覚だと和歌は「芸」でなく社交の職務の一環だったようです(現代の万年係長のカラオケも職務の一環かもしれません)。

その後中納言家持はさまざまな派閥争いを掻い潜り当時としては平均寿命を大幅にオーバーする70歳になっても現役で職務を全うしており、このころようやく部長級の中納言に出世させてもらっています。「長生きはするものだ」ということでしょう。

なお、中納言家持は愛妻家として知られていますが、男性に向けて詠んだ和歌でも知られています。

庭に降る 雪は千重敷く しかのみに 思ひて君を 我(あ)が待たなくに

(口語訳)庭に降る雪はおそろしいほどの高さに積もってきたが、私がお前(男)を待ちこがれた思いはこの程度ではなかったぞ

これは富山県知事時代に、京都へ使いに行って帰ってきた大伴宿祢池主氏に詠んだ歌でこれをもとにボーイズラブではないかと騒がれていますが、恐らく酒の席の余興でしょう。

ちなみにもし中納言家持がボーイズラブだとすると、歴史に残っているなかでは草分け的な存在となるようです。その後のボーイズラブ(以下BL)だとされているのは以下の通りです。

・弘法大使 遣唐使として唐に行くが、女人禁制の寺社でBLが抜け道として存在しており風習を持ち帰ったという説がある。
・藤原頼長 寺社の風習が貴族(国家公務員)にも飛び火。
・織田信長 森蘭丸とういうBLパートナーが有名。
・伊達正宗、徳川家康、上杉謙信にその説あり。

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上杉謙信と栃尾の油揚げが合体した「あぶらげんしん」
(出典:http://p.twipple.jp/B9A9A)

・徳川家光、徳川綱吉はかなり確信犯のようで、綱吉は36人くらい囲っていたようです。
・その後は足利義満、細川政元にその説あり。
・武士から町人文化へ飛び火があり、平賀源内、井原西鶴、松尾芭蕉にその説あり。
・近代では、近藤勇らにその説あり。
・現代だと芸能人には多いようですが、とくに「軍団」と名の付く集団は芸を広げるために仕込む風習があるようで、確実にノンケなのはたけし軍団くらいという笑い話もあります。

かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける(中納言家持)

(口語訳)かささぎという鳥が夜空に渡したという橋の周りに輝く霜のような星屑を見ると、いつのまにか夜も更けていたよ

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出典:http://aomorigonta.blog119.fc2.com/blog-entry-86.html

若いころイケメンだった万年係長の家持が天の川を見て詠んだこの歌。女性に向けてだったか男性に向けてだったかはどちらでもよいでしょう。出世はできなかったものの今でも十分通用する素晴らしい和歌を詠んだことが印象的でした。

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